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2009/10/19

秘密のプリンちゃん。

◇このことは誰にも言わないでほしい、できれば俺とあなただけの秘密にしてほしい。俺は素晴らしいものを見た。

◇10月にしては真夏のような暑さの昼さがり、俺は青信号を待っていた。そこからビル間の小さな公園が見えた。

◇スーツを着た女性がひとり公園のベンチにいた。どんな画家でもこれ以上は地味にできない容姿をした30代後半か、40代くらいの女性。わら半紙がスーツを着ているようだった。

◇その女性は必死にプリンを食べていた。それはまるで「プリンを食べなければ死んでしまう」かのように。それはまるでプリンを食べる事で心臓を動かしているかのように。

◇人気の無いその公園で、その女性は一点を見つめながらプリンをスプーンで口に運んでいた。ひとくち、またひとくちとプリンが女性の口の中へと消えていった。

◇その迷いのないスプーンさばきは国際バレエ団のバレリーナの足のように軽やかで、カチカチと素早いリズムを刻んでいた。その女性はプリンを食べる芸術だった。

◇俺はとり憑かれたようにプリンを食べ続ける彼女から目が離せなかった。信号よ、青になるのはまだ早い、もう少し赤のままいてくれと願った。

◇瞬間、彼女の歯車が狂う。スプーンで持ち上げたプリンが地面に落ちる。女性はプリンが落ちたことに気付かない。リズムに乗ったまま空のスプーンが彼女の口に入った。

◇その女性はハッと我を思い出したように表情を変え、落ちたプリンを見つめた。いかに自分がプリンに支配されていたのか気付いたように見えた。

◇本当に素晴らしい出来ごとは、人に見てはいけないものを見てしまった気にさせる。信号が青に変わり、俺は何も見なかったかのように歩き出した。

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